超高密度人口区域(α)

つよくなりたいぼくごさい

二宮飛鳥「苦味と大人」

とくにないです。

 

 

 

 

 

髪を、頭を掴まれて、喉の奥に熱い肉の塊を押し込まれる。
嗚咽しそうになるのをぐっと堪え、今に来るであろう体液の射出を受け止める準備をする。

「っ・・・!」

一瞬の硬直とともに、僕の口内の肉塊が脈打ち、液体を放つ。

熱く、どろりと口内から喉を包み込むそれは、紛れも無く、プロデューサーの精液でしかなかった。

おおよそ三億の人間の種は、死んでいく時に苦味を発して逝く。まるで、芽吹くことができなかったあてつけをするように。

この苦味が、大人が知るべき一つの味なのだと。そう信じて、飲み込んだ。

苦味を堪えて、口を開けて、唾液で糸引く口の中をプロデューサーが見つめる。

少女が精液を飲み込む瞬間が見たいなんて、とんだ変態だな君は。

と、何度も繰り返したやり取りの後、必ず、何度も彼は頭を撫でる。

エクステに触れないように、そっと丁寧に。

頭を、髪を撫でていた手は、少しずつ下へ、顔へ、首へと降りていく。

当の昔に衣服は脱ぎ捨てていて、14歳の貧相な身体に、手はするりするりと伸びて、触れていく。

やさしく撫でられる、たったそれだけの行為に、僕の身体は敏感に反応する、声を漏らしそうになるのをぐっと堪えて。

「・・・あっ・・・・・・」

ひとことにも満たない、たった一音だけ声が漏れる、けど、プロューサーは何もいわずに、ただ少しだけ満足そうな顔をして、撫で続ける。

やめてくれと、一言言えば彼はもっと直接的に刺激してくるだろう、なのに、いえない。

もっと触れてほしいんだ、もっとなでて、さわっていてほしい。

僕の中でつながるよりも、そっちのほうがずっとつながってられる、そんな気がした。

指が中に伸びていく

なでられて、ふれられて、敏感になった身体に、その刺激は強すぎて

堪えきれずに、声が出る。

「あっ!・・・んっ・・・・・・」

理性はかすかに指が動くそのたびに、加速するように溶けていく。

自分が自分じゃなくなっていく、忌諱していたはずの、淫らな女性になっていく。

そんな感覚に酔いながら、意識はさらに下へ下へ、沈んでいく。

つくろうことも、何もできない、本能に意識が支配されていく。

指が抜かれて、ベッドに横たわる、目の前に突き出された肉の塊を、プロデューサーの一部だと実感したとき、何かがはじける。

口に含んでいたときは、ただのナニかでしかなかったはずのものが、今存在を変えて襲ってくる。

指なんかよりも、ずっと太くて、硬いものが挿入ってくる、そう考えるだけで。

何度でも、何回繰り返しても、この瞬間は、この時間はどうにもならない。

後はもう、為すがままに。

肉と肉がはじける音がする、自身の淫猥なあえぎ声も、プロデューサーの荒い息使いも、部屋の湿った空気に混ざって溶ける。

なんにも、言葉は要らない、飾り立てるような「好き」の言葉を聴いてしまったら、最悪理性を取り戻してしまう。

それくらいなら、音はいらない、言葉は要らない。

ただ、つながっている一つの証明として、人同士が擦れて、肉体がぶつかる音だけを、聞いていたかった。


動くスピードが早くなる、シーツを握る手に力が入り、本能的に終わりを察する。

頭に張った白いもやが、すべてを覆うその瞬間、耳元にひとつ音が聞こえた。

「ごめんな」

その一言と同時に、僕の膣内に精液が発射される。

白いもやが、一瞬で晴れていく。その先には何も無いけれど。

きっかけはもはや覚えていない、好きあっているならいいだろうと、勝手にそう思っていたんだろう。

愛に年齢は関係ないと、映画やドラマを鵜呑みにして、僕らは進んでいく。

けど、この先におそらく綺麗な道は無いだろう、綺麗な結末なんて、あるはずが無い。 現実は、フィクションにはなり得ない。

なら、それに抗うように、僕は大人のフリをしよう。 フィクションの人間のように「大人のような子供」になろう。

痛い子だと、思われるならそれでいい、回りくどく言葉を発して、自分の世界を作り上げて。

僕と、キミと、世界を作って、そこに閉じこもって。

苦味を覚えて、種を含んで。

いつ、爆発するかもしれない種を身体に宿して、この世界で生きていこう。

せめてプロデューサーの言った、ごめんの意味を知るまでは。