超高密度人口区域(α)

つよくなりたいぼくごさい

「ドリップトリップドラッググリップ」【モバマス掌編?】(一ノ瀬志希)

かなり試験的と言うか、只の怪文書になってしまいましたがまあいいよね。

 

香水の調合を大きく間違えて使ってる志希ちゃんの話です。

 

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空から落ちる雨粒が水晶玉に変わったタイミングで、落ちてくる雨粒の数が脳に刻み込まれるのが止んだ。

七十六億四千二百八万と十二個の雨粒が落ちるまでに、あたしの頭は四回のリセットが必要で、その度に酷く勢いよく真下に落ちていく感覚が体感出来た。リセットから戻る度に雨粒の落ちる音は大きく大きく響くようになり、しまいには痛みを覚える程度になっていった。

雨粒が水晶玉に変わった今、今度はこれを数えるべきかと一瞬大いに思案するけれど、床に転がっていた食べかけのカシューナッツを見て考えるのを辞めることにした。

一口齧るごとに、咀嚼する音や、カシューナッツの味が深く染み込んで行くような感覚を覚えて、豆がこんなにも美味だったの知る。

美味しいものを食べた故か、涙が零れた、今見るべきは打ちっぱなしのコンクリの床ではなくて、灰色の雨空である事は全神経が理解出来ているのだけど顔が上がらない、ちぐはぐな自分の身体を理解出来ずに泣きながら笑う。

 

はて、同じ色にも関わらずこうも違うものかと思案していると、コンクリートの床を涙が突き抜けていくのが見えた。空に落ちていくように、あるいはここが空の上になったように、ボロボロと零れる涙は雨となって灰色のコンクリートを突き抜けていく。

外にいる人が、みんなあたしの涙を浴びていると思うと、愉快で堪らなくなって、笑いが止まらなくなる。

今だけは、あたしがかみさまなのだ。

あたしがこうして泣くことで、外は雨になる、涙が雨になって、コンクリートが空になる。

なんだか、おもしろくなってきた。

 

 

先ずは、おおよそ七十六億の涙を流すことにしようか。