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つよくなりたいぼくごさい

「いつか見た笑顔」【モバマス創作(関裕美)】

関裕美とその担当プロデューサーの掌編です。

文字数500字制限です。ピッタリにおさめたはずなので数えてみるといいかもしれません。

 

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ほんの少しだけ、笑顔が上手くなった、気がする。

あの日、上手く笑えないなら、笑う練習をすればいいと言った貴方は、私以上に笑顔が下手くそで、だからこそ信用出来たのかもしれない。
けど、私が上手に、心から笑えるようになる度に、貴方の笑顔も上手になった。下手くそな二つの笑顔が、変わっていくのが楽しかった。
ステージに立つたびに、仲間が増えるたびに、笑顔の形も増えていった、笑うたびに、世界が一つ綺麗に見えた。
私の笑顔が増えるたびに、貴方の笑顔も増えていった、なによりその事が、堪らなく嬉しかった。

きっと、あの人がうまく笑えたなら、私は踏み出せなかっただろう、私がうまく笑えたのなら、あんなふうに声をかけられることもなかっただろう。

 

うまく笑えないことで、噛み合う縁もある。

 


けれども、本当に少しだけ、難しい顔をした貴方が愛おしく思えるんだ。
あの、ぎこちない笑顔が、無性に見たくなるのだ。
多分、笑い方を知った今はもう、あの下手くそな笑顔は取り戻せないけれど、少しだけ意地悪なんかして、戸惑わせて。
少しくらいはいいだろう、きっと、多分。

 

あの日、ポスターの前で見た凄く下手くそな笑顔が、私はきっと大好きなんだ。

 

なんてね。